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2013/01/17

一番の問題は「体罰」じゃないということ

ITMediaにポラリエで星を撮る話を書いてメール。
さらにascii.jpに猫連載を書いてメール。

さて時事ネタ。
桜宮高校バスケ部キャプテンの話。
世間では「体罰」の話に終始しているのだけど、
今回の件に限っては、体罰に終始せず、
別のアプローチをするべきなんじゃないかと、
もっと根が深い本質的な問題があるはずだと、
違和感を感じてたのだが
ビジネスメディア「誠」を読んでたら、その疑問を見事に解き明かしてくれるコラムがあったのだ。
Business Media 誠:窪田順生の時事日想:桜宮高校バスケ部キャプテンの自殺の原因は「体罰」ではない (1/4)

ちょっと引用する

 報道を見る限り、この少年はなにも“問題行動”をしていない。キャプテンとして部員を引っ張るリーダーであって、無免許でバイクに乗り停学中の部員が、授業についていけるようなフォローまでしていた。むしろ優等生であった彼を殴ることを「罰」とは呼ばない。 
 試合でのミスを言いがかりに拳を振り上げる。これはもはや「いじめ」だ。しかも、本人が「他の部員が同じことをしていたのに殴られないのに、自分だけ殴られる」と両親に苦悩を打ち明けていたことからうかがえるのは、「見せしめ」にされていたという事実だ。  
 いや、体育科の存在感がある高校で、長くても10年で異動というところ、15年も居座っていた日体大出スポーツエリート教諭の権力を考えれば、「公開処刑」と言ったほうが正確だろう。
 それはこの教諭本人の言葉からもよく分かる。教育委員会の調査で、彼は「強いチームをつくるためには体罰も必要」なんて言って、世間からさらなる批判を浴びた。 
 これは彼があまり日本語を知らないがゆえの誤解で、体罰を「公開処刑」に置き換えてみると何を言わんとしているのかよく分かる。それは「強い軍隊」をつくる秘訣だからだ。

コラムでは孫子の兵法をネタにしているのだけれども、
手っ取り早く強い軍隊を作るために、
団体の中にリーダーを作り、そのリーダーを「見せしめ」として処罰を加えることで、全体を引き締めるというメソッドを取り上げているのだ。
誰か下手な選手がミスをしたとして、その選手を怒っても、周りはなんとも思わない。下手したら「あいつは下手だからな」ですんじゃう。でもミスの責任としてキャプテンを処罰すれば、「これはヤバい」と全体が引き締まる。

士気をあげたい独裁者からすると、「隊長」だけを吊るし上げればいいのでラクだ。また首をはねられる側じゃなければ、それほど恨まれないので、孫子のように「素晴らしい軍師」なんてもてはやされることもある。

一番の問題は、バスケットボールは「スポーツ」であるべきなのに、そこから一番遠い手っ取り早く強い「軍隊」を作るメソッドを持ち込んでることであり、周りもそれを疑問にすら思わなかったことなのだ。

それが違和感の正体だったのである。
なんともそこがやりきれない感じで、
マスメディアも体罰の是非論じゃなくて、ここまで踏み込んで欲しいなと思う次第です。

昔、本宮ひろしの漫画「実録 たかされ」(Kindle化されてた!)を読んで、ああ日本にスポーツってないんじゃないかと思ったことがあって、
この漫画、本宮ひろしが書いた江川卓のドキュメンタリーで
当時の高校野球や大学野球の内幕なんかが描かれてて予想外に面白く、おかげで「甲子園」にまったく興味がなくなるという副作用もついてきたんだが(普通に考えたら、単なる高校生の野球部の日本一決定戦じゃないか)、
その頃思ったのは、
明治以降、スポーツとかいうものが欧米からはいってきて、「おお、これは国民の身体を鍛えるのによさそうだ」と競技として取り入れたはいいものの、それまで身体を鍛える系の項目が武道しかなかったものだから、そのメソッドでやっちゃった(というかそれしかできなかったのだろう)のを延々とひきずってるんじゃなかろうかと。
まあ運動部に所属したことないのでほんとにそうなのかはしらんけど。

ともあれ「実録たかされ」、大昔の江川卓の「空白の一日」を中心に、高校野球の実態とか、根性論でひっぱりまわされる部員とか、裏での大人達の暗躍とか、その辺が描かれてて、すごく面白かった記憶がある。本宮ひろしが取材した内容を江川当人にぶつけるという形で本人も登場するし。とっくに絶版になってたんだけど、電子書籍でこうして復活してるってのも面白いわ。今の時代に読んだらどんな感想になるのだろう。

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