ページ

2013/01/30

「江戸の崖/東京の崖」に興奮してます

明日からCP+だから家にいる時間が短いな、ってことで、早めにascii.jpの猫連載を書き、
さらに、日本カメラの特集の原稿に取りかかるも、
ついつい本を読んじゃってダメだな。

カルカルの「地図ナイト4」に行って以来、
また東京歴史探索欲が湧いてきて、どかどかと関連本を買ったのである。
特にこの3冊。

「地図でみる東日本の古代」は東日本(といっても古代の感覚なので、尾張以東である。熊野伊吹以東といっていいか)の古代官道を明治時代の地図上に引いたという大著で、一般向けの書籍じゃないので「でかくて重くて高い!」。まあ平凡社だし、14,800円ですが、買っちゃったのである。
土地勘がある東京近辺や名古屋近辺しか見てないけど、いやあやっぱ面白いわ。
詳細な解説はないので、あれこれ自分で調べたり過去調べた知識を頭にいれつつ見てるんだけど、東京の延喜式古代東海道はこの地図によると、丸子の渡しから現中原街道を進み、洗足池の上で右折、尾根道を大井に向かってる。

大井から北は点線(つまりわかってない)。延喜式の豊嶋駅は上野台地、谷中霊園のあたりに比定している。そこから東にまっすぐ向かって隅田川を渡り、立石などを抜けて行くルート。
続日本紀の古代東海道(武蔵国が東山道から東海道に移ったときの話。武蔵国府から乗瀦→豊嶋と続く)は乗瀦駅をどこに比定するかで、杉並区の天沼説と、練馬区の練馬説があるのだが、この本では天沼説をとっている。そこから豊島郡衙に向かい、豊島郡衙から尾根道を谷中方面に進み、東に向かうわけである。
そうした根拠が書かれてないのが不満といえば不満なのだけど、
見てると飽きないので危険。

「東京凸凹地形案内」は地図ナイトにも出演されていた今尾氏の本で、東京の細かい凸凹地形を楽しむ本。これはカラフルで柔らかい感じ。

で、極めつけが「江戸の崖/東京の崖」。著者は芳賀ひらく氏で、之潮の社長さんであり、タモリ倶楽部にもなんどか出演されてる方なのだけど、この本はすごい。
なんというか、この本の文章には「知」がある。
ひとつひとつの何気ない文章に表れる知識の広さや正確さ、論拠が必要な箇所にはしっかりその理由を論理的に述べつつ、かといって学術書のような堅苦しさや読みづらさはなく、突っ込むべきところはツッコミ、赦すべきところは赦し、それでいて知をひけらかすことはない。いいですなあこういう「知」のある文章。

わたしが一番興味ある、歴史は地形をどう変えて、いつどう改変されたかも、きちんと過去の文献に当たりつつ、信憑性がある解釈をしてくれる。
平川はどこをどう流れていたか、江戸城の地形はどう改変されてどう保護されたか、そんな話が随所に出てくるのだ。
「崖」を表す古語が今の地名にどう残ってるかという話もたまらん。大森にある「八景坂」は八景が見えるというので名付けられたのだけど、「はっけ」は「ハケ」、つまり「崖」を表す古い言葉のひとつだといわれたら、はっとせざるを得ないもの。確かに崖なんだよ、あの辺は。
第10章で国分寺崖線が出てくるのもうれしい。このあたりをとりあげたタモリ倶楽部、見てました。芳賀さんが出演した回。
いやあもうこれはたまらん。

それでも地形の話であるから、文章だけでは瞬時にイメージしづらい箇所は多いのだが、豊富な図版がそれを補ってくれるのだ。随所の写真や明治期の細かい等高線が描かれた古地図がそうであるが、注目は「鳥瞰CG」。カシミール3D大活躍なのだけど、地形図や航空写真を貼り付けた上で、標高を10倍に誇張して描いた図が随所に出てくるのだ。
文章と図を平行して見ていると、特にわたしは「東京古道散歩」をはじめとする本を書くために地形を意識しながら古い土地を歩いたり走ったり(もちろん自転車で)、昔の地図を調べたりしていたものだから、ああ、あそこの高低差はこうなっててこういうわけでできてたのか、ってことがリアルにイメージできるのだ。

「江戸の崖/東京の崖」を読んでこんなに興奮して悦ぶのは一部の人だけかもしれないけど、出たとき(2012年の8月)に読んでおきたかったなあ、と思うことしきり。

ああ、こういう「知」にあふれた本を読んでると、
自分の「東京古道散歩」と全面的に書き直したくなります。
いつかその機会が訪れんことを。

0 件のコメント:

コメントを投稿