2023/04/04

0404:桜の色

ムックの原稿を書いて送る。

天気もいいのでおにぎりを作って桜を見ながら食べようという提案があり、

暗渠桜のたもとでおにぎり。


とはいえ、ここの桜並木は数年前にかなりばっさりやられたので

往年の桜のトンネルっぷりが復活するのは何年も先になりそうである。



桜の花びらをよく見ると、

先っぽの方が白に近く、根元に近づくにつれ色づくグラデーションである。

ソメイヨシノが薄いピンク色に見えるのはこの根元の色がが頑張ってくれるからなのだよな。

そうそう、どっかのコラムで、日本人にとって桜は出会いの季節(4月の新入学新入社シーズン)の象徴だったけど、今は咲くのが早くなって別れの季節(3月の卒業式シーズン)を象徴するものになろうとしてる……って書いてあったけど、

いやそもそも、桜が出会いの季節の象徴になったのは「桜≒ソメイヨシノ」となった近代のこと(ソメイヨシノ自身は江戸末期に作られた園芸品種だが、それを全国的に植えられてポピュラーになったのは明治以降だと思う)。

ソメイヨシノはクローン故に条件が合えば一斉に咲くことから『ソメイヨシノは日本列島や大日本帝国に同じ春を創りだした。つまり「日本」をひとつの桜で覆っていった。それが「日本をひとつの桜で代表させる」ことにリアリティを与えた』(『桜が創った「日本」』佐藤俊樹著)のだ。

それでも九州と本州太平洋側と日本海側と東北と北海道では咲く時期は大きく異なるわけで、桜を「出会いの季節の象徴」とするのは本州太平洋岸在住者の傲慢といって過言じゃない。

ソメイヨシノが全国を覆う前は、花見といえば開花時期が異なる様々な桜を1ヶ月くらいかけて楽しむことだったそうで、それを一斉に咲いて一斉に散るソメイヨシノが覆い、特別な感情を注入したのは、そこにナショナリズムを見いだした戦前の人々の想いでしかないのだと思う。

かくして、河津桜は2月に咲くし、続いてエドヒガン系のちょっと早い桜が咲き、タカトオコヒガンザクラが咲き、ソメイヨシノやオオシマザクラが咲き、そのあとは八重桜が咲くのである。

ソメイヨシノの並木が一斉にふわっと淡いピンクで覆われるのはとても印象的で美しく、満開の時期が短いのもまたナニカの象徴のようではあるけれども、そこにナショナリズムをのっけるのは好きじゃない。

というわけで「桜が創った「日本」」は名著なのでおすすめ。

0 件のコメント: