招待されて行ってきたのである。
1995年に登場したカシオのQV-10は真に画期的なデジカメだった。
なんというか、iPhoneの元祖といっていいレベル。
QV-10の夢想がiPhoneとなって結実したといって過言ではないほどである。
画期的だったのは、ニーズがあって誕生した製品ではなく、
QV-10が新しい潜在的なニーズを発掘したということ。
文字通り「発明は必要の母」。
まあトークショーではQV-10をナンパに使ってたという(笑)麻倉先生と
QV-10を開発したおふたかたが当時を振り返りつつあれこれ
QV-10に至る過程を語ってくれたのだが、
面白かったのは2点。
ひとつは「熱子」と「重子」の話。
まあデジタルカメラの試作機があまりに熱を持った上にあまりに重かった上にそう名づけられたのだそうな。
で、熱を持ちすぎるのでファインダーをはずしてそこに放熱ファンをつけた。
それだと画像を見られないので、
その頃登場した小型の液晶テレビをつないでみた。
おお。これはいいじゃないか、となったのだ。
もうひとつは
もともとは「テレビ&カメラ」企画だったこと。
小型液晶モニタの新しい使い道はないか→小型テレビだよな→それにCCDカメラを付けたらいいんじゃね→カメラ機能付きポケットテレビの誕生(未発売)→テレビ機能いらないんじゃね→世界初の液晶モニタ搭載デジカメ誕生
である。
今わたしがこんな仕事(デジカメ評論家的な)をしているのも
QV-10があったからで。
QV-10の存在を知り(まあ、パソコン業界におりましたから)、
これは面白い、買わねば、と、
発売日に即ヨドバシカメラへ走ったのである。
その前年にアップルがQuickTake100を出しており、わたしもレビューを書いたんだけど、
あれ、10万円もした上にモニタもついてなかったのだ。
あくまでも「Mac用の画像入力機器」のひとつで、「撮った写真を文書に貼り付ける」というDTP寄りの製品として登場してたのだ。
QV-10は違った。画質はひどいものだったけど、
「モニタ+内蔵メモリでパソコンがなくても単体で完結」し、
「撮った写真をその場で見て楽しむという新しいコミュニケーションツール」
として登場したのだ。
あれは凄かったね。
QV-10を買ってそこら中で見せて歩いてたらデジカメ関連の仕事がくるようになり、
カシオにも何度も取材に行った。
わたしにとって画期的だったのはもうひとつ、
「レンズが回転する」こと。
QV-10より先にシャープの「液晶ビューカム」というビデオカメラが回転式レンズを搭載していたのだけど、
デジカメではもちろん初。
QV-10を触ったことで、モニタ付デジカメの面白さや、「レンズが回転する」ことでアングルフリーになるという面白さを知ったのだ。
今、チルト式モニタが好きなのはもうQV-10のおかげといって過言ではないレベル。
ほんとはモニタのチルトじゃなくて、
「ボディが回転する」QV-10式が一番使いやすいのだよな。グリップとモニタの位置関係が固定されるから撮りやすい。
ちなみに、当時のQV-10は「.CAM」形式というJPEGに似てるけど違うファイル形式で保存されてたわけだが、今でもCAMファイルを開けるアプリがあるので
見返すことができるのである。
素晴らしい。画質があまりにアレなのも懐かしすぎ。
面白いので当時存在してたオウム世田谷道場の写真を。まだオウムがあれこれやらかす前で、「これ、なんだろ」と思ってたまたま撮ったのだった。
QV-10じゃなきゃこんなの撮ってなかったのは確かです。
まあ回転式レンズ(というか回転式ボディというか)は
その後、ソニーのCyber-shot 55系、ニコンのCOOLPIX 900系に受け継がれたものの
今は1台たりとも残ってません。
理由は簡単。背面モニタが大きくなり、レンズ部を回転させるスペースがとれなくなったから。たぶんそうだ。
まあQV-10を語ると長くなるけど、
あの頃よく遊んでた「電脳筒井線」の連中の間ではやり、
オフなんかで会うたびに撮った写真を見せあってたなあとか、
遊び仲間にいた音楽業界の人から
「海外からミュージシャンがくると秋葉原でQV-10を買ってた」という話を聞いたなあとか
(当初は日本でしか売ってなかったから)
まあいろいろと画期的だったのだ。
その後、デジタルカメラ市場は伸びそうだってんで
ソニーのCyber-shot、富士フイルムのCLIP-IT、さらにニコンやオリンパスが参入。
キヤノンやパナソニックは当初はあまり力を入れてなくて、
デジカメ黎明期は、カシオとフジとオリンパスとニコンで引っ張ったようなものだった。
で、カシオはそこでいったん脱落したんだが、
EXILIMで復活し、今にいたるわけである。
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