2015年3月12日木曜日

ルイス・フロイス「ヨーロッパ文化と日本文化」。16世紀の欧州と16世紀の日本と現代の欧州と現代の日本

終始自宅で仕事だったので最近読んだ本の話を。

戦国時代、日本に来てたヴァリニャーノというイエズス会の中の人が「日本巡察記」というのを書いてて、
途中からキリスト教普及のためにどうするべきかという内容なので
(まあ当時のイエズス会のレポートなので)
キリスト教史に興味がない人にはつらいのだが、
第一章の「日本の風習、性格、その他の記述」が大変面白い。
当時のイエズス会巡察史で天正遣欧少年使節団を派遣した人から見た日本の文化について書いてるのだ。
その中にこんな一節がある。
ジャパンナレッジ「東洋文庫 日本巡察記」より
もう「口にするにも堪えない」ということで、
これについては具体的なことは何も触れてないのが面白い。
よく読むと、あああれのことだなとわかる。

僧侶は女性との関係が禁止されていたので、その代わり寺の若い沙弥や喝食がその相手をするようになった、的な注釈付。
特に僧侶に対しては、当時の寺や僧侶がまあそんな感じで権力を持ち武装し肉を食い、
という生臭な事情があったのだろうが、
やはりキリスト教から見れば異教徒なので描き方は厳しい。

さてこの頃の日本を描いた本としてはルイス・フロイスの「日本史」が有名なのだが、
ちょっとした空いた時間を使って読むにはいささか大著すぎて揃えるにもコストがかかる。
読みやすそうなのはないかなと思って調べたら
ルイス・フロイスの「ヨーロッパ文化と日本文化」
を発見。岩波文庫。すごく薄くてすぐ読める。
ルイス・フロイス視点(つまり、15〜6世紀のポルトガル出身のカトリック教徒)で、
いちいち「ヨーロッパはこうだけど日本はこうだ」と
例を挙げて箇条書きにしただけの本である。
シンプル故に読みやすくて面白い。わかりづらい表現には注釈が入ってる。
すべて「われわれ(つまりヨーロッパ人)の間では云々。対して彼らは云々」とシンプルに書いてある。
僧侶に関していえば

われわれの間では、人は罪の償いをして、救霊を得るために修道会に入る。坊主らは、悦楽と休養の中に暮らし、労苦から逃れるために教団に入る。

である。当時から子供たちは寺で読み書きを教えていた。
われわれの教師は、子供たちに教養や貴い、正しい行儀作法を教える。坊主は彼らに弾奏や唱歌、遊戯、撃剣などを教え、また彼らと忌まわしい行為をする。
忌まわしい行為というのは男色ですな。
キリスト教徒からの視点ってことを割り引いても
そんなだったんだろう。

この本を「ああ、当時のヨーロッパ人は日本人をこう見ていたんだなあ」や「当時の日本人はこんな生活をしていたのだなあ」とみてもいいんだけど、
我々は現代の欧米や現代の日本を知っているわけである。
それらを合わせて、

16世紀のヨーロッパ人 ←→ 16世紀の日本人
   ↑↓            ↑↓
21世紀のヨーロッパ人 ←→21世紀の日本人

という4つの関係で見るとさらに楽しめる。
われわれの間では球技は手でする。日本人は足を使って遊ぶ。
この頃まだサッカーはなく、日本には蹴鞠があったのですな。
今とは逆なのが面白い。今は、ヨーロッパで一番メジャーな球技はサッカーで、日本で一番メジャーな球技はとりあえず野球(ボールを手で扱う)なのだから。
ヨーロッパでは娘や処女を閉じこめておくことはきわめて大事なことで、厳格に行われる。日本では娘たちは両親に断りもしないで1日でも幾日でも、ひとりで好きな所へでかける。
とか。ヨーロッパはキリスト教のせいで性に関して厳格であらんとしてたし、日本はその辺は鷹揚だったわけだ。何しろこんなである。
ヨーロッパでは未婚の女性の最高の栄誉と貴さは、貞操であり、またその純潔が犯されない貞潔さである。日本の女性は処女の純潔を少しも重んじない。それを欠いても名誉も失わなければ、結婚もできる。
戦国時代の武士に関していえば、離婚して再婚なんて当たり前だったしな。

ヨーロッパでは宗教改革やルネサンスの真っ只中で文化も変わっていくし、
日本はしばらくのちの明治維新でかなり変わる。
昭和の頃までひきずってたネタもある。
われわれの間では誰も自分の欲する以上に酒を飲まず、人からしつこくすすめられない。日本では非常にしつこくすすめ合うので、あるものは嘔吐し、また他のものは酔っ払う。
われわれの間では酒を飲んで前後不覚に陥ることは大きな恥辱であり、不名誉である。日本ではそれを誇りとして語り、「殿はいかがなされた」と尋ねると「酔っ払ったのだ」と答える。
もう、室町時代からそうだったんかい、とつっこみたくなるような話もあり、
そのあたりを念頭において読むと、何しろ箇条書きでシンプルな内容なので
楽しいのである。

「〜〜〜は日本の伝統だから守らねば」とのたまう人がいるけれども、
日本の伝統ってどこまで遡るつもりなん?
とツッコミつつ読むのもまた一興なり。

ものたりない人は、フロイスの「日本史」を。

それはともかくとして、
家電批評に頼まれた大量のデジカメにコメントを付ける仕事とか
点数をつける仕事とか、
さらにascii.jpに猫連載を書くとか。
そんな1日。

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